税務調査における「横目資料」とは何か?
沖縄県那覇市の税理士、渡嘉敷です。
「横目資料」という言葉をご存知でしょうか?
税務署は税務調査に必要な資料をいろいろなところから集めているのですが、そのひとつに銀行調査があります。
銀行調査に入る場合は「どこの誰の調査か?」ということを明らかにして、その人(法人)に関係する口座情報を見せてもらうわけです。
しかし、ですね・・・
特定の調査対象者の預金口座を調査しいているとき、他の人の口座の動きも見ることができてしまうわけです。
そして、その口座を「横目資料」として記録しておいて、後で申告状況を確認したり次の税務調査につなげるわけですね。
その「横目資料」の是非が裁判で争われている事例があります。
脱税事件の端緒になった被告の口座がなぜ見つかったのか?
被告は「国税が違法に口座情報を盗み見た」として無罪を主張しているようです。
大阪の事案ですが、被告は公判で起訴内容を認めたものの、国税側が違法な手段で被告の口座を見つけたと主張していて、調査手法の違法性が争点になっています。
この手法こそが「横目資料」というもので、被告はプライバシーを侵害する違法な手法だとして無罪を求めています。
一方、国税側は別の税務調査過程で被告の口座に入金された高額の入金を偶然見つけたとして調査に違法性はないと主張しています。
この裁判では、調査担当者に対して横目資料を目的に調査をしたことがあるかどうかを質問したようですが「ない」という回答だったようで・・・
さらに具体的な調査方法については「守秘義務」で証言を拒んだそうです。
被告の弁護士は「別事件の調査で判明したとは考えにくい。網羅的に口座情報を見る横目調査は無差別な監視につながる」と訴えていて、その判決に注目が集まっています。
銀行調査において、不特定多数の口座を調査することはダメとされています。あくまでも調査が必要な特定の口座を絞って調べる、というルールなのです。
しかし「脱税の摘発に横目資料は必要」という現場の声もあります。
不正の摘発とプライバシー保護のバランス・・・なかなか難しい問題ですね。
それにしても、調査の際には「横目資料だ!」と突っ込まれないような調査展開をするのが普通だと思っていたのですが、今回はどうしてこうなっちゃったんでしょうね?
【追記】
2018.05.09 判決がでました。
被告は懲役6月(執行猶予2年)、罰金1200万円の有罪判決だったそうです。
国税の勝ち!ということですね。
ただし、横目資料かどうかについては「違法な手法である疑いが残る」と指摘したそうです。
今後は資料の活用方法について慎重になるでしょう。